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世界タテメシ選手権  取り締まられ役返上

取り締まられ役返上
エレクトロニクス
企画部門
2000.1.20

 ふと、これまで何処へ海外出張してどんなことがあったか思い返してみた。
 アメリカ・イギリス・ドイツ・イタリア・スペイン・フランス・スイス・中国・台湾・シンガポール・フィリピン・マレーシア・タイ・ベトナム・南アフリカ……(以下略)。
 はぁ、いろいろ行きましたなぁ。

 で、どこそこで何を食べたかね、(食べに連れて行って頂いたかね)と考えてみるとおもしろいことに気がつく。タテメシ屋(日本料理店)の記憶が非常に多いのだ。つまり、どこの国に行っても、日本料理店に連れていって頂いている訳だ。とは言っても、その記憶の多さは国によって異なる。

 どういう相関関係でそうなるのかねと考えると、日本の「グローバル」と言われている「カイシャ」の一端が見えてくる。

 すなわちグローバル企業と言いながら、現地拠点への権限委譲や現地人の登用が進んでいる国ほど「タテメシ」比率は低くなる傾向がある。進んでいない国、すなわち「日本本社の現地出先窓口by日本人スタッフ」になっている国ほどタテメシ比率が高くなる。
 なるほどそうであろう。そうした国ほど現地事務所のスタッフは日本人駐在者が多い。日本からの出張者も日本人。ついでに商社の現地スタッフも日本人。出張者も駐在者も日本を離れて故郷が懐かしい・・・。よって、日本料理を頂きましょう、となる訳だ。

 が、これの意味する所、日本のカイシャの表面的な「グローバリゼーション」であろう。
 東京からの出張者も現地で肌に感じているのは、「日本人」の感覚な訳だ。それは食事ととどまらない。食事がそうであれば、昼間のビジネスにおいても同じように日本人同士の感覚でことが行われていることが多い。つまり、権限の与えられていない現地人スタッフと話をするにも、意思決定の局面においては「現地人スタッフ→現地日本人代表→日本からの出張者」ということになり、市場(現地)の生の声は届きにくい。

 現地人への権限委譲が進まぬ理由はいろいろある。委譲しようにも、「それに適した優秀な現地人スタッフが雇えていない。」しかし、これは「鶏と卵」のようなもので、「権限が与えられないような外国企業に現地の優秀な人が応募してくる訳はない」ということでもある。
 勿論、現地スタッフは離職率が高く重要情報を共有して意思決定に参加してもらいにくい云々、という理由も言われているが、ホントにそうなのだろうか。終身雇用を前提としていた日本企業における日本人の「暗黙知」の世界は確かに影響が大きいだろう。
 しかし、今や終身雇用の伝説は崩れている。しかも、終身雇用が続いていたとしても組織の組み換えも日常茶飯事になってきている。「暗黙知」の力は以前ほど大きくなくなって来ている気がする。日本本社のみならず、グローバルを名乗るなら、各国での体制についても今が変革・再検討のチャンスではないだろうか?

 勿論、やみくもに現地人を登用すれば良いと言うものではない。要は現地化、現地の市場やマインド、雰囲気、文化にどれだけ敏感に反応してビジネスに迅速に環流できるシステムができているか、であろう。

 この点でもおもしろい発見がある。日本人が現地拠点の重要ポジションを独占していても、「タテメシでなく、現地の料理店に案内して頂く比率が高い国」もある。自分の経験から考えてみるとそうした国では大抵、ビジネスが(取り敢えず)うまく行っている。なかなか、意味深くはあるまいか?

 また意志決定やらなんやらの難しい局面への影響だけでない。若い出張者にとっても、現地の文化に進んで触れることの意味は大きい。それが食卓の場面であったにしても。
 自分は入社数年後にタイに初めて行った時に、現地人スタッフにチャオプラヤ河べりの、現地人しか行かないタイ・レストランに連れていってもらった。二時間の食事中に20ケ所も蚊に刺され、おまけに翌日は大変なおなかの状況になった。でも、そうした賑やかな現地の食の場面、そこにいる人々を見ていると、その国の文化や特徴が見えてくる。
 また、いろいろあったがそうした国の思い出の方が強く残る。マーケティング・センス的にもそうした思い出のある国ほど色々なことに気がついて、ビジネスへの還元もでき、それが地道ではあっても本当のグローバリゼーションへの貢献にもつながる……そんな気がする。

 もちろん「連れていってもらう」のではなく、「自分で開拓することが大事」ではあるが。



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