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サラリーマン芸者論 社員A

社員A
金融機関
2000.1.19

「サラリーマンは芸者だ」、という暴論のようでいて不思議に納得できる話を先輩から聞いたことがある。初めは「そんな馬鹿な!」と驚いたのだが、会社生活が長くなるにつれ、けっこう実状に近いことを知った。
 芸者がのし上がっていくためには、若いうちに有能で実力があり、将来性のある旦那を見抜き、すり寄っていかなければならない。うだつの上がらない客にいくら入れ込んでも、水揚げにはさっぱり結びつかないからだ。逆に旦那が大物になればなるほど、芸者としての地位も上がっていく。
 サラリーマンもおんなじだというのである。いろんな上司がいるが、どの上司に将来性があるかをじっくり見ていて、「これは社長までいけるかもしれない」という上司に接近し、かわいがってもらうというのがパターンだというわけだ。

 しかし、芸者型社員の行動パターンは、芸者型を選択した時点で規定されてしまっている。すなわち、「何がいいか悪いか」という事の本質を追いかけるより、「いかに旦那の気に入られるか」をすべての判断基準においてしまうということである。
 ある程度は仕事をこなすものの、話が煮詰まってくると結局「話し合わせた方が楽だよなあ」という結論に落ち着いてしまう。それが「上司が"白"を"黒"といえば、"白"でも"黒"」という姿勢になるまでに、そうは時間はかからないだろう。
 旦那がまともなうちは、それでもまだいいのだが、年を取るにつれてちょっと頭がおかしくなってきたら、会社全体がおかしくなる原因になってしまう。それでなくとも、旦那の気に入るような情報しか持って行かなくなってしまうのだから、そんな芸者型社員に囲まれているトップにはまともな情報が上がらないので判断が鈍る原因になる。

 また、芸者型社員が幅を利かせる社内風土の会社では、現実的に賄賂が横行するということもあり得るのだ。昇進のために、上司に実弾を送るのである。有名な話であるが、ある金融機関では実力会長が自宅として使っていた社宅を気に入ったというので、会社の金で改装を行った後で、自宅として安く買い取った。その後、その金融機関の不動産担当部長は、取締役に昇格したという。そんな会社では、「じゃあ、俺もうまく立ち回って出世してやろう」と社員が考えるのはむしろ自然であろう。

 そういう風土の中では、トップとその取り巻きが、「いかに会社の中でぬくぬくと暮らすか」だけを考えて生きているわけだ。まさに会社組織は忠臣蔵のような組織論理が幅を利かせる世界になる。唯一面倒なのは株主総会で、社長はそれ以外では王様なのである。社長が頭を悩ませているというのであれば、芸者型社員の出番である。「なんとかします」と総会屋と癒着するのは、これまた自然なことであろう。そんな癒着が可能であるのも、株式持ち合いのおかげである。株式持ち合いは、市場を歪めているばかりでなく、ビジネスを歪め、株主の利益を失わせているということであろう。

  現在の社会の仕組み、現状を考えると、芸者的な要素を持ったサラリ-マンを一概に責めるわけにもいかない。それぞれ、個人の生活・家族の生活があり、会社での対応・振る舞いが大きな差となって個人・家族の生活に影響を与えるからである。
 人はなぜなぜ芸者型社員になってしまうのか。どうすればいいのかを、引き続き考えてみたいと思う。

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