事業再構築ができないカイシャは潰れてくれ

インタビュアー　飯坂彰啓

運営者　でね、とにかくそごうをみたいな会社に関わりを持った人というのは、これはもう全くの時間の無駄だったなと思うし、その個人にとって損失だったと思うんです。
　銀行もね、そごうに貸して、どのくらいの利子を取っていたかはわかりませんが、債権放棄をするのなら、そのプロジェクトでみれば損ですよね。かつ、社会的にも大きなマイナスを発生させているわけですから。そうするとそごうに対する融資の業務をやってしんどい思いをしたのは一体なんだったんだろうと考えるべきだと思うんです。そごうしかり、セゾンしかり、東急しかり……というわけで、大変「しかり」なカイシャばかりなんです。

　まあしかし、今度そごうの社長になる和田さんという人は、なかなかいい経営者なんですよ。西洋フードシステムズの再建に成功してから、西武百貨店に移り、社員の意識改革のために「西武百貨店白書」というのを何度か出して、従来の堤清二のやり方を否定しました。その時に、ヨーカドーの鈴木敏文なども連れてきて、知恵を借りるなど、それまで日本企業では考えられない大胆な社内文化の否定をやったんです。社内報に、他社の社長が出てきてオペレーションについて発言しているわけですから。業界では常識でも、明らかにする事はタブーだった、自社のバイヤーがキックバックを着服している事実などもきちんと公表して「こんなことはケシカラン」と書いてましたからね。印刷物に社員の不正が載るわけですから、凄いことですよ。実際それを、われわれメディア側も見ていたわけだし。まあ、あそこの会社は程度がひどかったらしいのですが。トップ=清二が会社を私物化しているのをみんな見てますから、社員のモラールが低下するのは無理もない。
　彼はその当時1000人もいた本部を縮小したりして、西武百貨店をなんとか黒字にしました。しかし、堤清二が溜めた借金というのはハンパじゃなくて、西洋環境開発や、東京シティファイナンス、ピサなどの借金の肩代わりを常に引き受けさせられて、清二と鋭く対立し、結局辞めることになってしまったわけです。まあ、なかなかの闘士ということができるでしょう。

　そごうには、百貨店としてのノウハウはもう残っていないと思うので、彼の経営手腕がどこまで生きるか、注目に値すると思います。
　しっかり仕事をしてくれと思いますね。

飯坂　　東急については、時価総額が400億くらいしかないのに、日本橋東急の土地を600億円で売ろうと考えていた。いったい何を考えているのかと思いますね。本当にあそこの土地が欲しい人がいるのなら、株を全部買えてしまうじゃないかという基本的なところの理解がないのでは。

運営者　土地については全部放出してリースバックで借りるんでしょうね。場所貸し以外に自分が付加価値をつける商売ができないんだったら、それはそれでしようがない。そういうふうにして業態を変化させていくしかないのでは。自分のところで資産を持って、それを回転させていくという商売ができる百貨店というのは、高島屋とか三越とか電鉄系とか、ごく一部になってしまうんでしょう。三越だって変な店がいっぱいありますよね、あの店舗立地のセンスの悪さは一品ですよ。

　いかに自分がつけられる付加価値を金や株と交換するかというスピードですよ。時は金なりなんだから、リストラをやりながら稼げるところに資源を集中投入して、自分の会社のコア・コンピタンスを中心に事業全体を組み立て直すしかない。
　「潰れる会社は潰れてくれ」というのが早い話ですよね、ほんと。大企業は潰してはいけないというけれど、それよりそこで死んでいる人材を外に出した方がいいですよ。

飯坂　　労働債権は一般債権よりも優先されるから、どうしてもだめだったら会社を清算して、給料を払った残りを公平に分配すればいいんですよ。

運営者　行き詰まったらそうすればいいんですけど、これがなかなか行き詰まらないようになってるんですよ。切り売りを続けるから。もしも債権放棄が認められていたら、そごうだって行き詰まらなかったわけですよ。そごうが行き詰まらなければ、清算するカイシャなんかあり得ないですよね。
　これ、自治体も全く同じ構造で、破綻しないんです。ではどうするかというと、行政サービスの質を低下させるんです。で、退職金を払うためには、地方債をどんどん発行しますからね。行き詰まらずに、回り続けることは回り続けるんです。

飯坂　　じゃあ、生命維持装置を付けた老人を養うために、介護の手間がかかってしようがないという状態になっているわけですね。ひどい喩えだけど。

運営者　でもその生命維持装置のパイプが、見ているうちにどんどん太くなって、本数も増えて行くんですけど。

飯坂　　では社会保険料に、そういった企業の維持管理費用も含めて徴収するべきではないでしょうかね。

運営者　国民負担率は限りなく100％に近づくのではないでしょうか。100％越えるかもね。

飯坂　　じゃ外国に逃げますか。

運営者　それは外国にとっても迷惑な話で、これじゃ世界の迷惑者ですよ。浮かぶ不良債権国家。不沈不良債権メガフロート。